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シャープ 6753 (2)



 
*急速に経営が悪化しているシャープ<6753.T>に対し、主力取引銀行のみずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行が金融支援の検討に乗り出した。鴻海精密工業<2317.TW>との出資交渉をにらみつつ、追加融資の実施や手法など具体策を早急にまとめたい考えだ。
  しかしシャープは最近まで優良企業とされ、銀行借り入れの依存度が低く、主力行との関係は緊密とは言い難い。銀行は支援と引き換えに一段のリストラを求める構えで、紆余曲折も予想される。 


 
*<シャープの債務者区分、一時的に「要注意先」格下げも>

 「急激に与信を拡大させてしまった。このままではまずい」─―。銀行のある幹部は危機感を露わにする。シャープの有利子負債残高は6月末で1兆2520億円。3月末から1248億円増加した。関係筋によると、増加分のうち1000億円弱を負担したのが主力行のみずほコーポ銀と三菱東京UFJ銀だ。3月末の両行の融資残高はほぼ同額で、合計2327億円。4―6月期の急増ぶりは尋常ではない。

 シャープは8月2日、2013年3月期の最終赤字予想を従来の300億円から2500億円に下方修正。みずほと三菱東京UFJは、同社の債務者区分を現在の「正常先」から「要注意先」に引き下げる可能性が出てきた。赤字が1期で済めば「一過性」との理由で「正常先」への区分が許されるものの、12年3月期の3760億円の巨額赤字に次ぐ水準に「正常先のままでは持たない。一時的に要注意先に落とす必要がある」(取引銀行関係者)との判断に傾きつつある。




 *「今後も支援を継続する」(三菱東京UFJ銀行広報)とのスタンスは明確にしているが、与信の集中リスクを考えると「これ以上のエクスポージャーの拡大は避けたい」(前出の幹部)のが本音だ。
 しかし格付けの引き下げに直面するシャープは、直接金融市場からの調達も絶たれようとしている。資金調達のうち、約7割を社債やコマーシャルペーパー(CP)の発行で賄ってきたが、間接金融で肩代わりをせざるを得なくなりつつある。当面の課題は、約3600億円あるCPのリファイナンスの手当。みずほと三菱はコメットメントラインの供与や、これ以上のエクスポージャーの拡大を避けるために取引銀行を増やすシンジケート団の編成も念頭に置き始めた。9月中旬には与信枠の供与など実施したい考えだ。

 もっとも一番に注目するのが、いまだに払込みが完了しない台湾の鴻海との出資交渉だ。銀行としては資金繰り支援はできるものの、財務基盤の強化には資本増強が不可避。さらに鴻海との提携で、収益基盤の強化にもつながると期待をかける。出資比率を10%未満に抑えたいとするシャープだが、銀行からは「信用補完のためには、さらに出資比率を上げる必要がある」(首脳)との声も出ている。
 

 *<関係希薄なシャープと主力行>

 金融支援に向けて動き出したものの、ネックはシャープと主力2行の関係が必ずしも緊密でない点だ。銀行の別の幹部は「『出してくれ』という経営数字をなかなか出してくれない」とぼやく。融資による信用リスクを取る以上、経営の内部係数や将来見通しなどの根拠を示すように求める取引銀行に対して、なかなか応じてくれいないという。
 
 もともとシャープの主力銀行は、旧富士銀行。その流れをみずほが引き継いだ。並行主力の三菱UFJは2000年半ば以降に「シャープ主力化」に向けて取引拡大に向けてまい進した経緯がある。両行の残高積み上げ競争の中で借り手のシャープが優位に立ち、「同社に対する銀行のモニタリングが弱まっていた」(関係者)という弱みもある。
 *融資を拡大するにしても、シ団を組成するアレンジャー役に付くにしても、主力行にとっては「シャープと二人三脚の体制が取れるかどうか」が重要になる。銀行の中には「ソニー<6758.T>やパナソニック<6752.T>のリストラに比べ、シャープは甘い。これまで本格的なリストラをやっていない。一度ぞうきんを絞る必要がある」との指摘もある。事業売却や資産流動化など、リストラ策の圧力を強める主力行の要求をシャープが受け入れるかどうかも、今後の焦点の一つになりそうだ。