ページビューの合計

良い記事ですので掲載(株式経済新聞2016/01/27)

●アベノミクス相場終焉で狙うべき株」

2016/01/27


  • ................................................................................................................................................................................


  • ●「ユーフォリア」と「負の連鎖」
  • 相場は生き物であるとよく言われますが、もしそうであるとするなら、人間が紡ぎ出す欲望を食い物にする怪物と定義できるでしょうか。人間の欲望は時にユーフォリア(陶酔状態)を生みだし、相場はこれを糧にいわゆるバブルと呼ぶべき環境を作り上げます。しかし、それは空中楼閣であり、期せずして舞台が回り、今度は負の連鎖によって人心を恐怖の深淵へと引きずり込みます。
  • 昨年8月下旬から9月末にかけた中国ショックによる下げ、そして年初からの崩落第2波は、まさに急転直下で景色を一変させた恐怖バージョンの典型といえます。前者は日経平均株価にして降下直前の高値から3700円強の下げ幅で約18%、後者は3000円強で約16%といずれもフリーフォール状態の下落相場をもたらしました。東証1部の騰落レシオが60%を大きく割り込む異常事態となって、さすがに突っ込み警戒感も働き、いったんリバウンドに転じましたが足もとは依然として不安定です。
  • 上げも下げも一方通行で上場銘柄の95%はおろか99%までが上昇もしくは下落する相場というのは、バイアスのかかった投資家心理の仕業だけではない、需給のメカニズムに何者かが潜んでいることを物語っています。急激な下げ局面でも売買代金は2兆円台が定位置で、セリングクライマックスとはとても言えないような状況。現時点で狼狽売りが噴出した形跡はありません。

  • ●ハイボラ相場の正体と海外マネー
  • では、「99%高下」の正体は何か。世界の経済、金利、為替などのマクロ指標にリンクして機動的投資を行うグローバル・マクロや、先物とオプションに特化し、金融工学に基づきトレンドフォローで高速自動売買するCTAなどの存在が、株式市場の生態系を狂わせているといってよいでしょう。
  • ここ再び脚光を浴びる日経レバ 1570 [東証E]が、先物主導のハイボラティリティ相場を演出している側面もあり、実態とは遊離したトレンドが形成されている部分があることは否めません。現象を目の当たりにしてから理由を探す後講釈相場に、マクロ環境から方向性を決定づけるような材料はなく、言い換えれば、今はまだ株価が戻りに転じさえすれば“後講釈で”強気が通用する相場ということでもあります。
  • ただし、たとえそうであったとしても年明けからの波乱相場は昨年8~9月の中国ショックによる下げよりは深刻です。
  • 昨年8月と9月の2ヵ月間で外国人投資家は3兆7300億円強を売り越すという怒涛の日本株売りに動きました。しかし、今年に入っての急落局面で売り越した金額は1月第2週までで6600億円程度。売りの本尊が海外資金であることは間違いありませんが、今回の波乱相場でオイルマネー売りが喧伝されている割に、その勢いは思ったほどではないのです。実需で買い向かう主体がいない、これが現在の東京市場の憂慮すべき実態のようです。

  • ●押し目買いから戻り売りの相場へ
  • アベノミクス相場の起点となった2012年12月に日経平均は月足ベースで24ヵ月移動平均線をブレーク、昨年9月末の急落時にも同移動平均線上で踏みとどまりました。この強力なサポートラインが、刹那とはいえ昨年12月に2万円台復帰を果たす跳躍台となったのです。しかし、今回はこの長期トレンドの境界線を下に抜けそうな雲行きです。これはTOPIXでも同じ状況にあります。前回も触れましたが、ここでの崩れ足が確認されればアベノミクス相場の終焉を意味するともいえます。
  • もちろん、12年以降の上昇相場は安倍政権の政策によって築かれたものとは言い切れず、アベノミクス効果はむしろ株高という“拡声器”によってアナウンスされた意味合いのほうが強いかもしれません。安倍政権はリーマン・ショック後の超金融緩和措置によって組成されたグローバルな株高の恩恵の只中にいたのです。しかし、先駆して世界株高を牽引した米国株市場ではNYダウが、そしてドイツの主要指数DAXが、さらにフランスのCAC40なども東京市場と同様に軒並み24ヵ月移動平均線を下回ってきており、世界の株式市場では長期「戻り売り相場」への潮流変化が起こっている可能性が否定できません。

  • ●潮流変化に合わせた個別株戦略
  • 個別株戦略も一考を要する場面といえます。個別企業のファンダメンタルズに関係なく、上場している以上は全体相場の流れに準じた株価形成を余儀なくされるだけに、今回のような暴力的な下げが再三にわたり発生すると思えば、長期保有することにリスクを感じるのは当然です。企業実態との比較から株価水準訂正のチャンスは今後何度も訪れると思われますが、欲張って長期で寝かさず、キャッシュ化を優先する知恵も必要となりそうです。
  • 全体相場が大きく下に突っ込む局面では主力株もしくはETFの逆張りが一つの選択肢ですが、嵐の収まった通常モードの地合いでは中小型株のテーマ買いに重心をシフトする場面です。昨年来のテーマであるフィンテック、自動運転車、ドローン、AR(拡張現実)、IoT(モノのインターネット)などが有力テーマですが、相互乗り入れの状態で各テーマ掛け持ちの銘柄も多い。底流ではAI(人工知能)関連が横串を通している印象も受けます。