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痛風性関節炎

はじめに

 飲酒によって血清尿酸値が上昇することは経験的に知られてきたが,飲酒による血清尿酸値の上昇メカニズムや,飲酒量,アルコール飲料の種類,さらには飲酒習慣と尿酸,痛風発症との関係などが次々と明らかにされた.運動に関しては,無酸素運動は血清尿酸値を上昇させるが,運動強度30%O2max程度の有酸素運動では血清尿酸値にはほとんど影響がみられず,またランニング距離が長い人,適度な運動をする人では痛風発症のリスクが低くなるとのコホート研究が発表された.これらの研究結果をふまえて,高尿酸血症・痛風患者に対する飲酒制限や運動指導をエビデンスに基づき行えるようになったことは,患者側の生活習慣改善のアドヒアランスの向上にもつながり,生活指導の成果が上がると期待される.

飲酒制限

 エタノールはアセトアルデヒドを経て,酢酸,アセチルCoAへと代謝されるが,酢酸からアセチルCoAへと代謝される際に,ATPが消費され,AMPが大量に産生される結果,アデニンヌクレオチド分解が亢進して,血清尿酸値が上昇する1).またアルコールを摂取すると,抗利尿ホルモンの分泌抑制により多尿をきたし,脱水傾向となるため,尿酸排泄が低下し,血清尿酸値が上昇する一因となると考えられる.さらに大量に飲酒すると高乳酸血症をきたし,乳酸による尿酸排泄の低下によって血清尿酸値のさらなる上昇を招くこととなる.
 アルコール摂取量が多いほど血清尿酸値は上昇し2),痛風発症リスクが増加することが明らかにされている3)(図1,表1)
 例えば体重65kgの人が大ジョッキ1杯(1,000mL)のビールを飲んだ場合,血清尿酸値にはほとんど影響がないが,大ジョッキ2杯では血清尿酸値は13~24%上昇し,尿中尿酸排泄量も7~20%増加する.さらに大ジョッキ3杯飲むと血清尿酸値は20%上昇し,また血中乳酸の増加によって,尿中の尿酸排泄はむしろ減少する(表2)4)
 【飲酒量をもとに,血中アルコール濃度を求める簡易式
アルコールの血中濃度(%)=
飲酒量(mL)×アルコール濃度(%)÷833(mL)÷体重(kg)
により概算】
 したがって,血清尿酸値にほとんど影響のない飲酒量の目安としては,日本酒1合,ビール500mL,ウィスキー60mL程度と考えられる.

 「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版」の生活指導の項では飲酒量の制限に重点が置かれているが,近年,アルコール飲料の種類や飲酒習慣と血清尿酸値・痛風との関係についても明らかにされた.俗にビールにはプリン体が多く含まれるため血清尿酸値を上げやすく,焼酎は他の酒類より血清尿酸値が上昇しにくいといわれるが,アルコール飲料の種類と血清尿酸値や痛風発症リスクとの関係について検討したコホート研究によると,ビール350mL,蒸留酒44mLの摂取で血清尿酸値はそれぞれ0.46mg/dL,0.29mg/dL上昇したのに対し,ワイン120mLの摂取では血清尿酸値の上昇はみられず5),またビールや蒸留酒では摂取量の増加に伴って痛風発症リスクがそれぞれ,1.5倍,1.2倍高くなるが,ワインでは関係がなかった(図2)3).このようにプリン体を多く含むビールは,同じ血中アルコール濃度であれば,他のアルコール飲料と比較して血清尿酸値や痛風発症リスクへの影響が強いと考えられる.
 また飲酒の習慣のある人では,エタノールの代謝が亢進しており,エタノールによるアデニンヌクレオチドの分解が促進するため,飲酒習慣のない人と比べて血清尿酸値が上昇しやすい.
 したがって,飲酒による血清尿酸値の上昇を少しでも軽減するためには,飲酒量の制限だけではなく,アルコール飲料の種類や,毎日飲まないなど飲酒の習慣にも留意する必要がある.

痛風結節の治療

 痛風結節を生じる症例では高尿酸血症のコントロールが不良で,急性関節炎を繰り返していることが多い.アルコール摂取,肥満,利尿薬服用なども誘因の一つとされる.関節内あるいは周囲に生じたものは関節破壊を起こしうる.好発部位として,第1中足趾節関節,耳介,肘,アキレス腱周囲などがある3).痛風結節は尿酸塩沈着が関与する病態であるので,その治療は血清尿酸値のコントロールである.痛風では血清尿酸値のコントロール目標は6.0mg/dL以下であり,これにより痛風結節の発生の抑制と消失が期待できる.また,目標値をさらに低くすることにより,痛風結節の縮小速度は速くなる.ベンズブロマロンとアロプリノール併用療法の有効性が報告されている4)

おわりに


 痛風患者はほとんどの場合,急性痛風関節炎(痛風発作)の発症をきっかけに医療機関を受診する.痛風関節炎の速やかな治療が痛風の生涯治療にとって重要であると考えられる.

高尿酸血症は,男性の約3分の1に見られる一般的な病態であり,そのリスクについては,痛風や腎障害など尿酸が直接関与する場合と,心血管疾患などのようにマーカーとしての関与が示唆される場合とに分けて臨床管理を行う必要がある.血清尿酸値と悪性腫瘍や総死亡との関連もガイドラインで示されているが,血清尿酸値はやはりマーカーとして関連しているものと考えられる.

薬物療法と食事療法、そして適度な運動をきちんと実行していくことがなにより大事です。
食事
▶いわしやさんま;程々に
プリン体の多い食品に分類されますが、その一方で、動脈硬化を予防するEPAやDHAが豊富に含まれていて、どちらも取りたい食品


アルコール;焼酎お湯割り1合程度
中でもビールは最もプリン体が多く、ウイスキーの約50倍、ワインの約15倍、日本酒の約5倍にもなります。高尿酸血症や痛風の人はビールは避けるようにしましょう。 

水分;十分に取る。2㍑/日
高尿酸血症や痛風の人が尿路結石や腎障害を合併しやすい原因として尿の酸性度が関係しています。高尿酸血症や痛風では尿が酸性化しやすく、尿が酸性に傾くと尿酸が溶けにくくなり、結石ができやすくなります。こうした合併症を防ぐには尿路管理が重要になってきます。尿路管理の方法は、水分を多くとって尿量を増やすことです。水分を多くとって尿量を増やせば、尿酸が溶けやすくなります。尿量は通常1日に1~1.2リットルですが、高尿酸血症の人は1日に2リットル程度の尿がでるように水分を取ることを目標しましょう。また、糖分の多いソフトドリンクを飲みすぎると、エネルギーの過剰摂取になりますので、水やお茶などの糖分を含まないものとるようにします。具体的には、食後のお茶を1杯から2杯にしたり、汗をかいたら水分を補給する

果物;
尿をアルカリにする点ではおすすめですが、糖質が多いので朝食や昼食、間食で食べるようにします。

朝食の理想;
・糖質の吸収が穏やかで、脂質の少ないごはんに納豆、みそ汁
又はヨーグルト、果物、豆乳、野菜ジュースなどの消化のよいものがいいでしょう。そのときには昼食で1日の摂取エネルギーを調節します。

ヨーグルト;
プリン体の含有量が非常に少なく痛風対策には有用なアルカリ性食品です。乳製品に含まれているカゼインやラクトアルブミンは、腎臓から尿酸が排泄されるのを促進する働きがあります。体内にプリン体を取り込まない、体内の尿酸を外に排泄する、結果尿酸値が下がるというわけです。

食物からより体内合成される量のほうが多い;
尿酸の原料となるプリン体には、食物から摂取するものと、体内で合成されるものがあります。かつて痛風の患者さんはプリン体を含む食品を厳しく制限されていましたが、最近の研究で食品に含まれているプリン体のほとんどが腸管内で分解されてしまう事がわかってきました。
食事から摂るプリン体より、体内で合成されるプリン体のほうがはるかに多いのです。
また実際に食べ物からのプリン体を制限しても、血中の尿酸値は1.0mg/dl程度しか低下しない事も明らかになっています。さらに尿酸代謝の研究が進み、尿酸コントロールする薬剤が開発された事も、痛風患者さんの食事によるプリン体制限が緩和された原因のひとつです。

高プリン体食品の摂り過ぎには注意;
いくら食品から摂ったプリン体が分解されるといっても、過剰摂取は問題です。日常の食事ではそれほど気にする必要はありませんが、プリン体を多く含むレバーなどの内臓類やかに味噌、ウニなどをたくさん食べ続けるのは避けるべきです。珍味や干物もプリン体を多く含んでいるので、食べ過ぎには注意が必要です。食品からのプリン体摂取は1日400mgを超えないようにしましょう。特に100g当たり200mg以上のプリン体を含む食品あまり食べないよう注意が必要です。

 
プリン体が極めて多い食品(100gあたり300mg以上)
 干し椎茸380mg鶏レバー312mg
マイワシ干物306mg かつお節493mg
 煮干し746mgイサキ白子306mg
アンコウ肝(酒蒸し)399mgビール酵母2996mg
 クロレラ3183mg ローヤルゼリー403mg
*ロイヤルゼリーを1日100㌘はまず食べない。せいぜい3㌘くらい。ということは含有量は12mg。まず大丈夫なのでは?
+ヤクルトは現在クロレラは使っていない。乳酸菌飲料であるので大丈夫?

 プリン体が多い食品(100gあたり200~300mg)
豚レバー285mg 牛レバー220mg
 カツオ211mg マイワシ210mg
大正エビ273mgオキアミ226mg
 マアジ(干物)246mg サンマ(干物)209mg

 
プリン体がやや多い食品(100gあたり100~200mg)

ブロッコリースプラウト130mgひらたけ142mg
乾燥大豆173mg 納豆114mg
豚肉(カタスネ)108mg 豚肉(ヒレ)120mg
豚肉(ランプ)113mg豚肉(タン)104mg
豚肉(心臓)119mg豚肉(腎臓)195mg
牛肉(クビ)101mg牛肉(ミスジ)104mg
牛肉(モモ)111mg牛肉(スネ)106mg
牛肉(心臓)185mg牛肉(腎臓)174mg
鶏肉(手羽)138mg鶏肉(ササミ)154mg
 鶏肉(モモ)123mg鶏肉(皮)120mg
鶏肉(砂肝)143mg鯨肉(赤身)111mg
サラミ120mg マグロ157mg
イサキ149mgサワラ139mg
キス144mgトビウオ155mg
ニジマス181mg赤カマス148mg
 マダイ129mg ヒラメ133mg
 ニシン140mg マアジ165mg
アイナメ129mg マサバ122mg
赤アマダイ119mg ブリ121mg
 サケ119mgアユ133mg
 スズキ120mg メバル124mg
 サンマ155mgコイ103mg
マガレイ113mgドジョウ136mg
 タラコ121mg 明太子159mg
 スルメイカ187mgヤリイカ161mg
 タコ137mg クルマエビ195mg
シバエビ144mgズワイガニ136mg
 アサリ146mg カキ185mg
 ハマグリ105mgツナ缶117mg
 サーモン缶133mgカニ味噌152mg
ボタンエビ(卵)163mg ウニ137mg
アンコウ肝(生)104mg生ハム138mg

 プリン体がやや少ない食品(100gあたり50~100mg)
蕎麦粉76mg ホウレンソウ51mg
カリフラワー57mg豆もやし57mg
カイワレ大根73mgブロッコリー70mg
マイタケ99mg乾燥小豆78mg
赤味噌64mg豚肉(カタ)81mg
豚肉(カタバラ)91mg豚肉(カタロース)95mg
豚肉(バラ)76mg 豚肉(ロース)91mg
牛肉(カタバラ)77mg牛肉(カタロース)90mg
牛肉(ブリスケ)79mg牛肉(リブロース)74mg
 牛肉(ヒレ)98mg牛肉(タン)90mg
牛肉(第1胃)84mg羊肉(マトン)96mg
羊肉(ラム)94mgボンレスハム74mg
プレスハム64mgレバーペースト80mg
ベーコン62mgワカサギ95mg
 ウナギ92mgハタハタ99mg
 タラバガニ100mgツミレ68mg
ボタンエビ53mg ホタテ77mg
タコワタ80mgイカワタ60mg
アンコウ(身生)70mg さきいか94mg
[D] プリン体窒素含有量:76~100
魚肉類:かつお、にじます、まいわし、まがき、するめいか、車えび、さんま干物、豚腎臓、牛腎臓、牛心臓
豆 類:大豆
[C] プリン体窒素含有量:51~75
魚肉類:まぐろ、いさき、さわら、きす、とびうお、べにます缶詰、まだい、ひらめ、にしん、ぶり、さけ、あゆ、すずき、さんま、どじょう、あさり、やりいか、まだこ、芝えび、ずわいがに、たらこ、豚ヒレ・もも、鶏手羽・モモ・ささみ、サラミソーセージ、鶏皮・砂肝
豆 類:納豆 
 
プリン体が極めて少ない食品(100gあたり50mg以下)
玄米37mg白米26mg
胚芽米35mg大麦44mg
小麦粉(薄力粉)16mg小麦粉(中力粉)26mg
小麦粉(強力粉)26mg鶏卵0.0mg
うずら卵0.0mg牛乳0.0mg
チーズ6mgもやし45mg
オクラ40mgそら豆36mg
グリンピース缶詰19mgなめこ29mg
えのきだけ49mgつくりたけ50mg
ピーナッツ49mg豆腐(冷奴)31mg
豆腐(湯豆腐)22mg豆乳22mg
白味噌49mg醤油45mg
枝豆48mgおから49mg
ソーセージ50mgコンビーフ47mg
スジコ16mgカズノコ22mg
焼きちくわ48mg笹かまぼこ48mg
板かまぼこ26mg鳴門巻き32mg
魚肉ソーセージ23mgさつま揚げ21mg
イクラ4mgアーモンド31mg
カキの種14mg豚骨ラーメン(スープ)33mg
豚骨ラーメン(麺)22mg青汁粉末(ケール)40mg

[B] プリン体窒素含有量:26~50
魚肉類:こい、まがれい、わかさぎ、うなぎ、はまぐり、たらばがに、まぐろ缶詰、つみれ、豚すね、豚ばら・ロース、牛肩ロース・ヒレ・モモ・すね、牛舌、マトン、ラム、ハム、ベーコン、コンビーフ
豆 類:大納言あずき
野菜類:ほうれん草、カリフラワー
穀 類:そば粉

[A] プリン体窒素含有量:0~25

穀 類:ご飯、パン、うどん、そば、マカロニ、スパゲティ、小麦粉、とうもろこし、クラッカー、玄米、大麦
いも類:ジャガイモ、サツマイモ、片栗粉、サトイモ、くず粉
乳・乳製品:牛乳、チーズ、脱脂乳
卵 類:鶏卵、ウズラ卵
魚肉類:ウインナーソーセージ、さつま揚げ、かまぼこ、ちくわ数の子、筋子
野菜類:キャベツにんじん、小松菜、トマト、きゅうり、かぶ、なす、かぼちゃ、白菜、大根、ごぼう、えのきだけ
果 物:季節の果物、缶詰類、ジャム、ゼリー、果汁
油脂類:サラダ油、しらしめ油、バター
海藻類:のり、わかめ、コンブ
豆 類:豆乳、そらまめ、豆腐
調味料:、塩、しょうゆ、砂糖およびその加工品、蜂蜜、みずあめ
嗜好品:コーヒー、ココア、チョコレート
その他:ゼラチン、肝油、木の実
クロレラは痛風患者には最悪なのでしょうか?
私は尿酸値が高く、痛風で悩んでいるのですが、人に勧められるままに
クロレラを飲みつづけていたのですが、先日あるサイトでクロレラの成分表を
見たところ唖然としました
痛風の原因であるプリン体の含有量が恐ろしく多いのです。
プリン体が多いといわれる魚貝類の5倍に匹敵するほど含まれているのです。
今まで薬を飲んだり、間があいたり不規則な治療しかやってなかったことが
原因だと思っておりましたが、クロレラを飲み続けていたことも
原因だったのではと失望しました。
クロレラを販売しているメーカーも、こんなことは隠さず公表すべきではないのでしょうか?

成分を確かめないで飲み続けていたのはミスではあるけれど、間違った認識を持ったまま疑わずに飲み続けている人に対してメーカーも服用の際の注意点を記載すべきだと思います。クロレラには亜鉛や鉄分が多く含まれ、赤血球の働きを活発にする働きがあります。健康維持に大いにプラスになる部分はそのままでいいのですが、人によってマイナスに働く部分はたとえ補助食品の指定であっても、一般に公表するのがメーカーの責任ではないでしょうか。すべての人が特定のサイトを訪れて成分をチェックするはずもないですし、このことでメーカーが公表していることにはならないと思いますが。

▶運動
運動の仕方によっては、高尿酸血症や痛風の人にとって、デメリットとなる場合もあります。筋力トレーニングや短距離走のような激しい運動をして大量にエネルギーを消費すると、プリン体が尿酸へと分解されて尿酸値をあげてしまいます。ですので、激しい運動は避けて、併せてこまめな水分補給をすることを心がけるようにします。

▶入浴
入浴により、血行が良くなるのは いいのですが、患部の血行まで良くなってしまい、さらに患部は腫れあがることになります。ある程度、痛風発作が治まるまでは
入浴は避けるか、患部(たいていは足)を湯船につけない方が無難です。本当は・・その方が 治りも早いのですけどね。痛風発作というのは、体内に (主に関節) たまった尿酸結晶を腫れと発熱によって、溶かしてしまおう、という体が自分を守るための反応なのですから。
薬というものは、この「腫れと発熱」を抑え込んでしまおう、という性質のものですから、どうしても治りが遅くなるのです。

薬というものは・・というか、「痛みどめ」というものは、血管を収縮させて、血液をあまり流れなくさせるのです。そんな働きがあるのです。
関節(患部)に沈着した尿酸結晶は、剥がれ落ちるとき、血液中の白血球が「異物」として認識します。で・・この体内の「異物」を白血球が攻撃するのです。

この攻撃が、激しい腫れと痛みを引き起こします。これが、いわゆる「痛風発作」。

血管を収縮させて、血液の流れを悪くするのは、この白血球をあまり患部に行かせないようにするためです。
ですので、徐々に攻撃(痛みと腫れ)は治まってきます。

・・・ですが。
血液というものは、本来、血のめぐりがあって、必要な栄養分をのせて、全身を巡るものですから、薬という人為的なもので、血行を悪くさせるものが、それほど良いとは思えません。

栄養分を運ぶ道 (血管) も収縮してしまうわけですからね。

ですので、なるべくなら、痛みがある程度治まってきたら、できることなら「痛みどめ」の服用を減らす、もしくは止めることをおススメします。

ですが、わかっていても、あの痛みは尋常じゃありませんので、痛風発作が起きてしまうと、仕事もなにも あったもんじゃございません。「痛み止め」とは上手に付き合うことと、それから、少々 治りが遅くなっても、やはり痛風発作のときの入浴は避けた方が無難だと思います。
高尿酸血症に関係する生活習慣:痛風や高尿酸血症の発症には体質(遺伝的素因)が関与しますが、さらに、いくつかの生活習慣が関与していることが知られています。尿酸値に影響を与える主な要因は次の様なものです。
  1. 肥満:尿酸の排泄が抑制されるために尿酸値が高くなります。
  2. アルコール:尿酸の生成を促進する上に、腎からの排泄を阻害します。どのアルコールでも尿酸値を上昇させますが、ビールには尿酸の元になるプリン体が多く含まれているため特に尿酸値を上昇させます。
  3. プリン体:内臓や肉汁などのプリン体を多く含む食物を好んで食べると尿酸値が上昇します(表1参照)。
  4. 激しい運動:短い時 間に筋肉を激しく使い、瞬発力を要求される運動でも尿酸値は上昇します。一方、マラソン・ジョギング・水泳などの有酸素(エ アロビック)運動では、尿酸値は上がりません。
治療と予防:血清尿酸値が高いほど短期間の内に痛風になる可能性が高いので、高尿酸血症の方は血清尿酸値を正常範囲にコントロールし続けることで、痛風発作や腎障害・動脈硬化の進展などを防ぐことができます。治療は、食事療法を中心とする生活習慣の改善、薬物療法の二つから成り立っています。
生活習慣の改善1(食事)
  1. 総カロリーを制限します。これは、悪化因子の一つでもある肥満の解消にもつながり ます。
  2. プリン体含有量の多い食物(表1参照)をできるだけ避けます。
  3. アルカリ性の食品(野菜・海藻類・牛乳など)を多く取る様にしてください。尿が酸性ですと尿酸が溶けにくく、尿管結石や腎臓への尿酸の沈着の原因となるからです。
  4. アルコール(特にビール)は避けましょう。
生活習慣の改善2(食事以外の生活習慣)
  1. 普段から水分を十分に取り、尿量を多くしましょう。
  2. 適度な運動(20~30分の早足歩き、自転車こぎ、水泳などの有酸素運動)を毎日継続して行いましょう。
  3. 精神的ストレスの発散に心がけましょう。
薬物療法(1):急性発作に対する治療
  • コルヒチン:急性発作の特効薬です。ただし、発作の前兆期あるいは初期に服用しないと効果がありません。通常、1錠(0.5mg)を数時間おきに服用します。発作が治った場合、副作用(吐き気、腹痛、下痢など)が出現した場合、総量が2mgに達した場合にはその時点で服用を中止します。長期連用では、脱毛、肝障害、骨髄障害などの副作用があるため、最近はあまり使われなくなってきています。
  • 非ステロイド抗炎症剤:いわゆる鎮痛解熱剤として使われている薬剤ですが、最近はこちらの薬を使用する場合が増えてきている様です。
薬物療法(2):高尿酸血症のコントロール
  • 生活習慣の改善でも尿酸値が9mg/dlを超えるような場合には、内服薬で尿酸を下げる治療が必要となります。尿酸を下げる薬には、尿酸産生阻害剤と尿酸排泄促進剤とがあります。
  • 尿酸産生阻害剤(アロプリノール「ザイロリック・アロシトールなど」):体の中で尿酸をできにくくする薬で、尿酸産生過剰型の患者さんや、腎障害・尿路結石合併例で主に使われます。
  • 尿酸排泄促進剤(プロベネシド「ベネシッド・プロベネミドなど」、ベンズブロマロン「ユリノーム」など):できてしまった尿酸を尿中へ追い出す薬で、尿酸排泄低下型の患者さんで主に使われます。このグループの薬剤を服用するときには、水分を十分に摂取して尿量を増加させ、尿をアルカリ性に保つために重曹やウラリットU等の尿アルカリ化剤を併用して、尿のpHを6.0~6.5に維持する事が必要です。
  • どちらの薬剤を使用する場合でも、定期的に尿酸の値をチェックして、継続的に尿酸をコントロールすることが大切です。生涯にわたる治療が必要であることを十分に理解し、治療に取り組んでください。
痛風発作の既往がある場合では、尿酸を下げる薬を飲み始めると、体にたまった尿酸が溶け出して、逆に発作が起こりやすくなることがあります。これは、一種の関門みたいなものですので、指示をよく守り治療を止めないようにしてください。

表1 食品中のプリン体含有量 
プリン体の特に多い食品牛ヒレステーキ(200g)84.6mg、豚ロースステーキ(200g)79.8mg、カツオ切身(80g)72.2 mg、車えび(80g)68.6mg、アジの干物(60g)65.3mg、さんまの切身(80g)54.4mg、まぐろの切身(80g)53.8mg、タ ラバガニ(100g)47.4mg、ヒラメの切身(80g)46.0mg、まだこ(80g)45.8mg
アルコール飲料ビール大瓶1本32.4mg、日本酒1合2.2mg、ワイングラス1杯1.0mg、ブランデー(40ml)0.2mg、ウイ スキー(80ml)0.1mg、焼酎お湯割り1杯0.0mg
プリン体の比較的少ない食品鶏肉ささ身(30g)20.1mg、干し椎茸5個(10g)18.6mg、大豆(20g)16.8mg、かまぼこ 4枚9.8mg、精白米(65g)8.2mg、ウインナーソーセージ(30g)5.9mg、えのきだけ(20g)4.9mg、プロセスチーズ(25g) 0.7mg

痛風

痛風とは、足の親指のつけ根などの関節に炎症を起こして、強い痛みを伴う病気です。血液中の尿酸値が高いと、関節に尿酸の結晶がたまり、突然強い炎症を起こします。発作的な痛みの症状がおこるため、痛風発作と呼ばれています。発作が続くと足首や膝の関節までも痛み始め、発作の間隔が次第に短くなり、関節を破壊していきます。30代、40代男性での発症が多く、女性は痛風全体の1~2%くらいの割合で、男性に圧倒的に多い病気です。

痛風の原因

痛風の原因は血液中の尿酸値が上がるために起こります。プリン体という食べ物に含まれている物質を多くとると、血液中の尿酸値が上がります。痛風発作の原因は、尿酸の結晶に対して、白血球が反応し炎症をおこすためです。

痛風の症状

血液中の尿酸値が高い状態が続いても、気がつかないうちに、尿酸の結晶が関節にたまり、特に症状はありません。発作前にチクチクする・熱っぽい・圧迫感などの前兆症状を自覚することもあります。
運動、ストレス、プリン体の多量摂取などをきっかけに、急に関節に強い痛みが起こり、関節が赤く腫れます。発作は、24時間以内に痛みのピークを迎えて、3~4日後には徐々に改善し、自然におさまります。放置すると発作を繰り返し、発作の間隔が次第に短くなります。痛風発作の起きやすい部位は、足の親指の関節や足首の関節ですが、それ以外の関節でも、炎症が起こることがあります。

痛風の検査

血液検査で血液中の尿酸値が7mg/dl以上かどうか調べます。痛風発作中の炎症が強い時には、尿酸値がやや下がる傾向がありますので、炎症がある程度治まってから検査をしないと、わからないこともあります。炎症の程度や、腎臓の障害の有無なども、血液検査で調べます。安定していたら、通常は3ヶ月に1度血液検査をします。高尿酸血症の原因が産生過剰か排泄低下を調べるため、尿中の尿酸排泄量を調べることもあります。

痛風の診断

痛風の診断は、痛風の発作中の関節の中に尿酸の結晶があることを証明することで確定しますが、痛風の症状は特徴的なので、通常は症状や経過で診断します。
ひとつの関節だけに症状がある。
関節が赤く腫れている。
症状が出てから1日以内にピ-クになる。
同じような症状が以前にもあったことがある。
片足の親指の付け根または足首の関節に炎症があり、赤く腫れていて激痛がある。
血液検査で尿酸値が高い。

痛風の治療法

痛風の治療法は薬物療法が中心になります。痛風は、状態により、前兆時、発作時、間欠期に分けられ、治療法が異なります。
1
前兆時:コルヒチン
痛風発作の直前にチクチクする・熱っぽい・圧迫感などの前兆がある場合、発作の予防目的でコルヒチンを1錠だけ飲むことがあります。痛みが起こってからでは効果がないので、前兆がはっきり自覚できた時だけ飲みます。最近では下痢などの副作用もあることから、あまり使われません。
2
発作時:消炎鎮痛剤
発作時は痛みをやわらげることために、消炎鎮痛剤の中でも非ステロイド性抗炎症薬が治療の中心になります。
痛みが強い時は、非ステロイド性抗炎症薬に加えて副腎皮質ステロイド薬を使うこともあります。なお、発作時に飲んで尿酸値が変動すると、関節の痛みが逆に悪化することがあるため、血液中の尿酸値を下げる薬は飲んではいけません。
3
間欠期:尿酸降下薬
痛みも炎症も治まった時期を間欠期と呼びます。尿酸産生阻害薬または尿酸排泄促進薬などの尿酸降下薬を使い、血液中の尿酸値をコントロールします。尿路結石の防止のため、尿をアルカリ化させるウラリットを飲むこともあります。

痛風の予後

通常は1週間前後で痛みは治まってきますが、しばらくすると症状が全くなくなります。半年から1年くらいたつと、同じような発作を繰り返すことがありますので、油断は禁物です。
痛風の薬を飲み始めても、食事療法、運動療法によって、薬を飲まなくても尿酸値が正常になり薬をやめることができることもあります。

日常生活の注意点

1
食事(プリン体)の制限プリン体は様々な食事に含まれていますので、食事全体の量を減らすことが必要です。特に、いわし、えび、かつおぶし、白子、レバーなどにはプリン体が多く含まれていますので、たくさん食べ過ぎないことです。
2
アルコール制限ビールや発泡酒には、非常に多くのプリン体が含まれています。日本酒やワインでは、プリン体の量は、ビールの十分の一ぐらいになり、更に、ウイスキーや焼酎などでは、非常にプリン体の量が少なくなります。
3
水分摂取尿酸は、腎臓から尿の中に排泄されます。水分を十分にとり、尿の量を多くすれば、尿酸も尿中により多く排出されます。
4
軽い運動
ウォーキング(早足での散歩)、水泳などの有酸素運動は尿酸値を上げずに、無理なく続けることです。激しい運動や脱水を起こすような運動は、尿酸値を上げて、痛風発作を誘発することがあります。
炎症を起こしている時には、運動は控えておいたほうよいでしょう。

痛風の注意点

症状がなくなると、薬の内服を中断してしまう方や飲んだり飲まなかったりする方もいらっしゃいますが、尿酸値が高い状態が続いたり、尿酸値が上がったり下がったり変動すると、痛風発作が起こりやすくなります。定期的に検査をして、薬を内服して尿酸値をコントロールする必要があります。